No.0030 第2話 神道

その1「祝詞(のりと)」


神道の神社や神棚では、神事で神前に捧げる言葉、「祝詞(のりと)」というものがあります。その中でもっとも小さなものに「祓詞(はらえことば)」といわれるものがあります。具体的に見ていきましょう。

「 掛(かけ)まくも畏(かしこ)き伊邪那岐大神(いざなぎのおほかみ)筑紫(つくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の小戸(おど)の阿波岐原(あはぎはら)に禊祓(みそぎはら)へ給(たま)ひし時(とき)に成(な)りませる祓戸大神等(はらへどのおほかみたち)諸諸(もろもろ)の禍事罪穢(まがごとつみけがれ)有(あ)らむをば祓(はら)へ給(たま)ひ清(きよ)め給(たま)へと白(まを)す事(こと)を聞食(きこしめ)せと恐(かしこ)み恐(かしこ)みも白(まを)す」


現代語に翻訳しますと、

「御名を口に出すのも恐れ多い伊邪那岐大神(いざなぎのおほかみ)さまが筑紫(つくし)の日向(ひむか)の橘(たちばな)の小戸(おど)の阿波岐原(あはぎはら)という場所に禊祓(みそぎはら)へをなされた時に、お生まれになられた祓戸大神(はらへどのおほかみ)さまたち私(わたくし)に諸諸(もろもろ)の禍事罪穢(まがごとつみけがれ)がございましたら「祓(はら)へ給(たま)ひ清(きよ)め給(たま)へ」と申しますことを、お聞き届けくださいますよう恐(おそ)れ多くも申し上げます」


呪文でも何でもありません。 古語ですが普通の日本語です。

ここでいくつかのことがわかります。まず神様に対し、「どこどこで生まれた、なになに神様」と書かれています。つまり出生地と名前が書かれています。なので、こちら、つまり私達も「どこどこで生まれた、〇〇というものでございます」と挨拶すべきという発想が生まれます。

例えばあなたが鹿児島生まれ、東京神社(仮名)でお参りするのならば、「鹿児島は指宿(いぶすき)で生まれました〇〇と申します」というのが正しいかもしれません。または「鹿児島は指宿で生まれ、世田谷(せたがや)に住んでおります〇〇と申します」かもしれません。なぜかと言うと、魂の分霊という意味では
神様との接点は、命を宿(やど)した「誕生」にこそ意味があるからです。